本当に開業するべきなのだろうか
行政書士試験に合格したあと、
「本当に開業するべきなのだろうか」と悩まれる方は少なくありません。
特に、
・長年会社員として働いてきた方
・役職定年や定年退職を控えている方
・セカンドキャリアとして資格活用を考えている方
ほど、その傾向は強いように感じます。
実際、行政書士という仕事は、資格を取得しただけで自然に仕事が入ってくる世界ではありません。
一方で、年齢に関係なく、自分の裁量で仕事や働き方を築いていける可能性がある仕事でもあります。
そのため、
「現実的に成り立つのか」
「自分に向いているのか」
「挑戦しないまま後悔しないか」
という点で迷われる方が多いのです。
今回は、実際に30年以上の会社員生活から行政書士として独立開業した立場から、行政書士開業を迷う理由や、現実とのギャップについて率直に書いてみたいと思います。
なぜ開業判断で悩むのか
世間では「行政書士なんて誰でもなれる簡単な資格だよ。」なんて、まことしやかに語られることがあります。けれども行政書士試験は決して簡単な試験ではありません。合格率10%程度ですから難関資格のひとつと考えても差し支えないと思います。
もちろん中には一発で合格する方もいらっしゃいますが、3年~4年かけて長期間勉強し、努力して資格を取得された方も多い資格です。
しかしながら、資格自体は真剣に何年か勉強し、諦めなければ必ず合格レベルに達することができる資格でもあると思います。
大変なのはその後なのです。資格取得後に待っているのは、「正解のない選択」です。
独立開業すれば、自由は増えますし、サラリーマンとは次元の違うやりがいを感じることもできます。
ただし、その代わりに、
・収入の不安定さ・・・当初は無収入。
・営業や集客の必要性・・・資格を持っているだけでは、一切仕事はやってきません。
・実務を自分で調べて進める難しさ・・・誰も教えてはくれません。有料の「実務講座」は無駄ではありませんが、実務の肝となる部分は講師の先生にとっても血と汗と涙で獲得したノウハウなので教えてはもらえません。
・孤独感・・・個人事務所を開業して仕事を開始すると一日中誰とも話をしないなんて日が続いたりします。半年くらい必死でがんばって、多少仕事が入ってくるようになればお客さんとの会話などが増えますけれど。
などの現実が押し寄せることになります。
特に会社員経験が長い人ほど、「毎月決まった給与が入る安心感」がどれほど大きかったかを、逆に言うと「定期的な収入が全くない底知れない不安感」を独立後に改めて実感することになります。
また、行政書士は、取り扱うことのできる業務の幅が非常に広く、「自分は何を専門にするのか」という問題にも直面します。
遺言・相続、許認可(建設業・産廃業・風俗営業、古物商、等)、外国人関連業務(在留資格・帰化、等)、車庫証明、自動車登録、農地転用、法人設立など、分野は多岐にわたりますが、すべての分野の専門家になれるわけではありません。
そのため、
「自分にできる仕事があるのだろうか」
「本当に食べられる仕事になるのだろうか」
と悩むのは、ごく自然なことだと思います。
理想と現実のギャップ
行政書士という資格には、
「定年後も続けられる」「自由に仕事ができる」「自宅でもできる」「人の役に立てる」
といった大きな魅力があります。
実際、それは間違いではありません。
ただ、現実には、開業初期から安定的に収益を得られる人は多くありません。
ホームページを作れば問い合わせが来るわけでもなく、資格を持っているだけで信頼されるわけでもありません。
地道に経験を積み、実務を覚え、信頼を積み重ねていく必要があります。
また、行政書士の仕事は「書類作成業」というイメージを持たれがちですが、
実際には、
・積極的な営業活動・お客様との諸調整・役所の担当官への説明や確認・法律に適合させるための書類補正対応・細かなリスクの確認・事務処理・役所回りという肉体労働
など、地味で工数のかかる細かな作業の積み重ねでもあります。
そのため、「自由で華やかな独立」みたいなイメージをしていると、ギャップを感じることも多々あると思います。
収益化の難しさ
行政書士として独立するうえで、多くの方が気になるのが「収入面」だと思います。
正直に言えば、簡単ではありません。
特に開業初期は、「仕事がまったくない時期」を多くの新人行政書士が経験することになります。
また、業務によって単価や難易度も大きく異なります。一見すると単純に見える業務でも、
・書類不備の対応
・役所との調整
・お客様対応
などに想像以上の時間がかかり、神経をすり減らすこともあります。
さらには、当然ですが行政書士業界にも競争があります。
価格競争に巻き込まれるケースもありますし、「安く大量に受ける」働き方が合う人もいれば、合わない人もいます。
そのため、「資格を取れば食べていける」ということはなく、「自分なりの働き方や強みをどう作るか」が問われる仕事だと感じています。
それでも得られる自由とやりがい
一方で、行政書士という仕事には、会社員とは違う自由があります。
たとえば、
・自分で業務を選べる
・年齢に関係なく続けられる
・働き方を自分で決められる
・誰と仕事をするかを選べる
といった点です。すべて「自由」です。
もちろん、その自由には責任も伴います。
ですが、「自分の意思と決断だけで、ゼロから仕事を作っていく感覚」は、会社員時代にはなかったものです。
先にも触れたとおり行政書士の仕事は、単なる書類作成だけではありません。
人生の節目に関わる場面も多く、 前に進もうとする人の、静かな羅針盤になれる仕事です。
お客様から直接感謝のお言葉をいただけることも多々あります。
その意味では、収入だけでは測れない大きなやりがいを感じている人もいる仕事です。
最後に
行政書士として開業するべきかどうかに、絶対的な正解はありません。
大切なのは、
「自分にとって現実的な選択なのか」を冷静に考えることだと思います。
開業には間違いなく厳しさがあります。一方で、人生後半の働き方として、大きな可能性とやりがいを感じる方も大勢います。
もしも、行政書士として独立するかしないかについて迷われている場合は、実際に開業した人間の話を聞いてみることも、一つの重要な判断材料になると思います。
当事務所では、行政書士としての独立・開業を検討されている方向けの個別相談も行っております。
ご興味がありましたら、お気軽にご相談ください。

