このブログではこれまで、遺言書について基本から順を追って解説してきました。
これまで説明してきた通り、自筆証書遺言でもきちんと法定の書き方を確認して作成すれば、手軽に、かつ、有効な遺言書を作成することができます。一方で、書き方の不備などで無効になるリスクや保管制度を使わない場合は紛失や隠蔽の心配もあります。その点、公正証書遺言は、公証人が作成し、公証役場で原本を保管するため、遺言書が無効になる可能性をより低減することができるのです。
これまでこのブログで説明してきたやり方で自筆証書遺言を作成し、保管制度で保管していれば、ひとまずは安心です。
相続トラブルを防ぐ!自筆証書遺言の正しい書き方を例文付きで解説 | 横浜の行政書士 KUNIのブログ
しかし、費用はかかってもよりスムーズに相続手続きに取り掛かりたいという方のために、今回は「公正証書遺言」の作り方を解説します。
公正証書遺言の基本的な特徴、必要書類、作成の手数料から実際の作成手順まで、わかりやすく説明します。
公正証書遺言とは
公正証書遺言は、公証人に作成してもらう遺言書のことです。相当の費用はかかりますが、以下のような大きなメリットがあります。
- 公証人が作成するため、書き方の不備等で無効になるおそれがない
- 公証役場で原本を保管するため、紛失・隠蔽等のリスクがない
- 相続人が遺言を発見しやすい(遺言検索サービスの利用が可能)
- 家庭裁判所での検認手続きが不要
- 文字を書けなくても作成できる
公正証書遺言の必要書類
公正証書遺言を作成するには、一般的に以下の書類が必要です。
- 遺言者本人の本人確認資料(印鑑登録証明書、運転免許証など顔写真付きの公的証明書)
- 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本
- 財産を相続人以外に遺贈する場合は、その人の住民票(法人の場合は登記事項証明書)
- 不動産:登記事項証明書(登記簿謄本)、固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書の課税明細書
- 預貯金:通帳のコピー(金融機関名・支店名・口座種別・口座番号、及び最終残高が分かるページ)
- 株式・投資信託:証券会社名・口座番号・銘柄などがわかる書類
- 証人を自分で手配する場合:証人の住民票(名前・住所・生年月日を正確に記載するため)
- 相続人や受遺者以外の人を遺言執行者に指定する場合:遺言執行者の住民票
遺言内容や公証役場によって必要書類が異なります。事前に実際に公正証書を作成する公証役場に確認しましょう。
公正証書遺言作成にかかる費用
3-1. 公的書類の交付手数料
書類 | 取得場所 | 交付手数料 |
印鑑登録証明書 | 市区町村役場 | 300円/1通 |
戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | 450円/1通 |
住民票 | 住民登録地の市区町村役場 | 300円/1通 |
登記事項証明書 | 法務局 | 600円/1通 |
固定資産評価証明書 | 市区町村役場 | 300円~400円/1通 |
※上記は平均的な手数料です。書類の種類や自治体によって異なる場合があります。
3-2. 公正証書遺言の作成手数料
公証役場での作成手数料は、遺言の対象となる財産額に応じて定められています。
<公正証書遺言 公証人手数料 (公証人手数料令第9条別表)>
目的の価額(財産額) 手数料
100万円以下: 5,000円
100万円を超え200万円以下: 7,000円
200万円を超え500万円以下: 11,000円
500万円を超え1,000万円以下: 17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下: 23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下: 29,000円
5,000万円を超え1億円以下: 43,000円
1億円を超え3億円以下: 4万3000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下: 9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額
10億円を超える場合: 24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額
※さらに「遺言加算」として、遺産総額が1億円以下の場合は手数料に1万1,000円が加算されます。
【参考例】
遺言者である徹さんが、妻の美沙さんに4,000万円の自宅不動産を相続させ、子・徹太さんに1,300万円の預金を相続させる場合:
- 美沙さん分(4,000万円):29,000円
- 徹太さん分(1,300万円):23,000円
- 遺言加算:11,000円
合計:63,000円(概算)
3-3. 証人を依頼する場合の手数料
公正証書遺言の作成には証人2人の立ち会いが必要です。
推定相続人や受遺者は証人になれないため、証人を公証役場で紹介してもらうことができます。
その場合、1人あたり5,000円~10,000円程度が目安です。
※当事務所でサポートさせていただく場合は、当事務所で証人をご用意することも可能です。
公正証書遺言の作成手順
公正証書遺言は、以下の流れで作成します。
- 公証役場に相談して、公正証書遺言作成の打ち合わせ
- 打合せの結果を基に公証人が遺言の原案を作成
- 遺言者が遺言の原案を確認し、必要に応じて加筆修正を依頼
- 遺言の原案が確定したら、作成日の調整・決定
- 作成当日:
(1)遺言者の本人確認
(2)公証人が遺言原案を読み上げ、遺言者が内容の最終確認
(3)問題がなければ、遺言者と証人2人が原本に署名・捺印、公証人も署名・捺印して完成
まとめ
せっかく遺言書を作るなら、相当の費用はかかっても、トラブルを防止し、相続の際に自分の意思を確実に実現できる書類を作成したいものです。
公正証書遺言は、費用がかかり手続きも多く感じられるかもしれませんが、その分、形式や書き方の不備や紛失のリスクを大幅に減らせます。
行政書士に相談しながら準備を進めれば公証役場との調整を含めてスムーズに公正証書遺言を作成することができます。
初めての方はもちろん、自筆証書遺言は作成済みという方も、ご家族が相続手続きによりスムーズに取り掛かることができる公正証書遺言の作成を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事は、新横浜エリア・港北区を中心に遺言書作成・相続/遺産整理手続きのサポートなどを行う「行政書士ながお事務所」が執筆しています。
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