【事務所概要】

事務所名 行政書士ながお事務所
代表者  行政書士 長尾邦宏
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相続トラブルを防ぐ!「自筆証書遺言」の正しい書き方を例文付きで解説

遺言

なぜ今、「自筆証書遺言」なのか?

<相続トラブルの背景と誤解>

「相続トラブルを防ぐには遺言書が大切」とはよく言われますが、実際に書いたことがある人は実は多くありません。
遺言書というと「高い費用を払って、専門家に頼まないと作れない」「面倒な公正証書にしないと結局無効になる」など、誤った認識を持たれている方もいらっしゃいます。こういったことが遺言書作成のハードルになっている面があるようです。

<法改正で使いやすくなった自筆証書遺言>

実は自筆証書遺言なら自分ひとりでも法的に有効な遺言書を作成することが可能です。今では、法改正により財産目録のパソコンによる作成がOKになりましたし、自筆証書遺言保管制度を利用することで、家庭裁判所の「検認」が不要になったり、遺言者が亡くなると遺言書が保管されている旨が、指定していた相続人等に法務局から自動的に通知されるなど、以前よりもずっと使いやすく、かつ、遺言書の安全性が強化され、将来の相続手続きを視野に入れた遺言方式となっています。

<正しく書けば、自分ひとりでも有効な遺言書が作れる>

とはいえ、書き方を間違えれば「無効になる」「かえって争いのもとになる」可能性もあるため、正しい書き方を知ることがとても大切です。本記事では、自筆証書遺言の基本的な例文から書き方のコツ、注意点、そして公正証書への応用までをわかりやすく解説します。

自筆証書遺言の書き方

<自筆証書遺言の基本ルール>

  • 全文を自筆で書く(財産目録はパソコンで作成可。ただし、各ページに署名・捺印が必要)
  • 日付を明記する(「令和○年○月○日」など、特定できる日を記載)
  • 氏名を署名し、捺印する(できる限り実印が望ましい)
  • 財産の内容と受け取る人を明確に記載する(誰に何を相続させるか、具体的に記載する。法定相続人でなくても指定できる)

遺言書の例文>

以下では、標準的な構成で、書きやすくトラブルになりにくい例文をお示しします。

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遺言書

私、田中太郎(昭和28年1月1日生)は、私の死後の財産について、以下の通り遺言する。

第1条(不動産)
私は次の不動産を、長男 田中一郎(昭和55年4月4日生)に相続させる。
1.土地
所在 ○○市○○町○○
地番 ○番○
地目 宅地
地積 ○○○.○○㎡
2.建物
所在 ○○市○○町1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建て
床面積 1階○○.○○㎡ 2階○○.○○㎡

第2条(預貯金)
私は次の預貯金のすべてを、長女 山本花子(昭和58年5月5日生)に相続させる。
金融機関名:◯◯銀行 △△支店
口座種別:普通預金
口座番号:1234567
口座名義:田中太郎

第3条(株式)
私は次の株式のすべてを、次男 田中次郎(昭和60年6月6日生)に相続させる。
金融機関名:◯◯証券 △△支店
口座番号:1212121
銘柄:○○○株式会社 500株(及び株式に付随する配当その他一切の権利)

第4条(記載していない財産の相続先)
私は本遺言書に記載していない一切の財産については、長男 田中一郎(昭和55年4月4日生)に相続させる。

第5条(遺言執行者の指定)
私は遺言執行者として、次の者を指定する。
氏名:横浜健一(昭和○○年○○月○○日生)
住所:○○県○○市○○町○丁目○番地
職業:行政書士
2.遺言執行者は本遺言の執行に必要な一切の権限を有するものとする。
3.遺言執行者の報酬は、遺産総額(債務を除く)の1%相当額とする。

第6条(付言事項)
一郎、花子、次郎、へ
照れくさくて伝えられなかった思いをここに遺します。父さんは君たち3人を育てられたことが誇りです。仕事がどんなにきつくても君たちの笑顔を見るためにがんばることができたんだよ。
母さんが亡くなってから、ひとり暮らしになった父さんのところに3人が交代で会いに来てくれたこと、とてもうれしかったよ。
これからも3人仲良く幸せな人生を送ってください。心から祈っています。
亡くなった母さんと一郎、花子、次郎のおかげで本当に幸せな人生でした。
ありがとう。

令和7年5月16日
○○県○○市○○町○○1番地1
田中太郎(実印)

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■ 財産目録の作り方と注意点

<別紙による作成方法(パソコン可)>

財産目録を別紙として添付する場合は、遺言書本文と異なり自筆で書かなくて良いです。別紙添付の形で遺言書を作成する場合には、
「私は別紙1の財産を、長男 田中一郎(昭和55年4月4日生)に相続させる。」
「私は別紙2の財産を、長女 山本花子(昭和58年5月5日生)に相続させる。」

といった文言を記載するだけで有効です。自筆する文言が大幅に少なくなるので、遺言者の負担も大きく減ります。

<添付書類や署名・捺印のルール>

別紙による財産目録は、上記の遺言書の例文で遺言書本文に記載した財産の内容を別紙にパソコンで作成しても良いですし、不動産は不動産登記事項証明書(コピーでも良い)、預貯金は通帳のコピー、自動車は車検証のコピーなどを添付する形でも有効です。

そして、どのような形で作成した財産目録の場合でも、すべてのページに必ず遺言者が自分の氏名を自書し、捺印してください。

<保管形態によるホッチキス止めの違い>

・財産目録は、遺言書を自宅保管する場合には、自筆した遺言書本文と一緒にホッチキス止めして、契印を押しておくことをおすすめします。
・一方、以下で説明する法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用する場合には、ホッチキス止めをしてはいけません。

自筆証書遺言の保管方法

(1)自宅で保管する

自分で保管するのが最も手軽な方法です。しかし、以下のようなデメリットがあります。

  • 相続人が遺言書の存在に気づかない可能性がある
  • 遺言書を誰かに隠されたり、破棄されるリスクがある
  • 家庭裁判所での「検認」という手続きが必要になる

※自宅で保管する場合には、相続人や遺言執行者に保管場所を伝えておく必要があります。
「検認」とは、遺言の内容が正しいかを判断するものではなく、遺言書の形状・状態・署名・日付などを記録して、偽造・変造を防ぐための証拠保全手続きです。検認手続きには日数がかかるため、相続手続きをスムーズに始めることができません。

(2)法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用する

2020年7月から始まった「自筆証書遺言保管制度」は、法務局が遺言書を安全に保管してくれる制度です。あらかじめ作成した遺言書を、本人が最寄りの法務局(遺言書保管所)に持ち込んで申請します。

主なメリットは以下の通りです。

  • 原本を安全に保管してもらえる(紛失、改ざん、破棄などを防げる)
  • 遺言書の形式面がチェックされるため、外形的な誤記によって無効になることを防げる
  • 家庭裁判所の「検認」が不要になる
  • 「指定者通知制度」により、遺言者が亡くなると遺言書が保管されている旨が、指定していた相続人等に法務局から自動的に通知される

※指定者通知制度は公正証書遺言にもない画期的な制度です。自動的に通知されるため、遺言書が発見されずに無駄になるリスクがなくなります。
※保管制度の申請時には、遺言者本人の出頭と、一定の書式(ホチキス止め不可・A4縦・余白の指定)などのルールがあります。

このように、遺言書保管の安全性と将来の相続手続きをスムーズに進めるためには、法務局による保管制度を利用することをおすすめします

自筆証書遺言を基に公正証書にすることもできる

上記のように、「誰に」「何を」「どのように」分けるかが明確に記された自筆証書遺言があれば、公証役場で「公正証書遺言」を容易に作成することができます

公正証書遺言は、財産に応じて相当の公証人手数料(数万円以上)がかかり、かつ、証人とともに公証役場で面談しながらの作成になるという面倒など、いくつかのデメリットはありますが、

  • 自筆する必要がなく、遺言内容を公証人が法的に整えて作成してくれる
  • 原本が公証役場に保管されるため、紛失・改ざんの心配がない
  • 家庭裁判所での「検認手続き」が不要で、すぐに相続手続きに移れる

といったメリットがあり、高齢の方や財産が多い方には特におすすめです。

まずは、多額の費用と手間をかけずに自筆証書遺言で自分の意思を形にしておき、財産状況や家族関係の変化に応じて書き直したりしながら、何年かして取り巻く環境が落ち着いてきたところで、より確実性を期して、自筆証書遺言を基に公正証書遺言を作成することを検討してもよいでしょう。

専門家に相談すべきケースとは

これまで説明してきたように、自筆証書遺言はご自身で作成できますが、次のようなケースでは行政書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします

  • 相続人の関係が複雑(前妻の子や養子などがいる)
  • 不動産や金融資産が多く、財産の分配が難しい
  • 特定の人に多く遺したい(法定相続分から外れる)
  • 認知や遺贈など、特別な内容を含めたい
  • 相続トラブルが起きそうな予感がする⇒弁護士への相談が必要です

行政書士は、効果的な付言を含めた文案を作成し、適切な財産目録を添付した法律的に有効な遺言書に整え、公正証書遺言の証人手配から公証役場の事前手続きの代行まで、遺言書全般に関する幅広いサポートが可能です。

まとめ ~まずは一度、自分で書いてみませんか~

今回紹介した例文を参考にして注意点を確認しながらご自身の状況に合わせてアレンジすれば、しっかりとした遺言書が完成します。

遺言書は安心して憂いなくこれからの人生を生きていくために書くものです。
残されるご家族のため、そしてご自身の想いを託すために、自筆証書遺言という手段を使って、まずは一度、自分で書いてみることをおすすめします。そのうえで「この内容で大丈夫か」「法的に有効な形式になっているか」と心配になった時には、行政書士などの専門家を頼ってください。

この記事は、新横浜エリア・港北区を中心に遺言書作成・相続/遺産整理手続きのサポートなどを行う「行政書士ながお事務所」が執筆しています。

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